遂に「ブーデー」とN君が恋人同士になってしまった。
私とI君にとっては最悪極まりない展開であった。
ある日、N君に「重大な報告がある」と言われた私とI君は、
N君の名の元、うどん屋の裏口に緊急召集された。
「えっとね・・・実は○○ちゃん(←ブーデー)と付き合う事になったんだ♪」
「・・・あ・・そう・・・おめでとう・・・N君。」
私達は社交辞令程度の祝いの言葉しか言わなかった。
これ以上、何を言えば良いのか解らなかったし、
ぶっちゃけた話、祝ってやる気が全く起きないからだ。
むしろ、
(はぁ・・・これからは何かしらの形で「ブーデー」と関わってしまうのだろうな・・・。)
と云う重たい気持ちで一杯だった。
そんな私達の気持ちなど知る由も無いN君は
聞いても無いのに「ブーデー」とのノロケ話を開始した。
「実は今○○ちゃん、ボクの家に居候してるんだよ♪」
(うわっ、これって同棲・・・・マジですかいっ?!)
「一緒にお風呂入ったんだー♪そしたら彼女、『Dカップ』だったんだー♪」
(そりゃそうだろうな・・・あれじゃ。
お湯少なくて良いから経済的だろうね、ある意味。ケケケ)
そして、極めつけは・・・・
「・・・でもね・・・、どんなに頼んでも
だけしか入れさせてくれないんだ・・・。」
(さ・・・、って・・・何だようぅぅぅぅぅぅ!?)
管理人のお兄ちゃんから、よい子のみんなにお知らせだよ!
本文中にあった不適切な表現は、急遽イメージ図()に差し替えたよ!
何を意味しているのかは、察してネ♪
|
・・・想像するだけで気持ち悪くなってきた・・・・オエエエッ。
まぁ、そんな感じで散々喋りまくった挙句、
「んじゃ、ちょっとトイレ行って来るね♪」
と言い残し、N君はトイレへ入っていった。
I君「はぁ~・・・最悪だ。」
私 「うふふっ、これで僕らも『ブーデー』ファミリーの仲間入りだねっ♪」
I君「やめてくれよ・・・・。しかし、まさかこうなるとは・・・。」
そう・・・・こうなるとは思わなかった。
「ブーデー」にも一応「彼氏」が居た訳だ。
N君は2人の間に入り込む余地は無いと思ったが、
まんまとN君はその余地に入り込み見事「ブーデー」をかっさらって行った。
つーか、何故よりによって「ブーデー」なのだろうか・・・・。
恋愛に飢えていたのだろうか?
それとも、N君なりに「ブーデー」の良い所を見つけたからなのだろうか?
そう私が考えてると、
I君「ねぇ・・・そういえばさ・・・。」
I君は何かを思い出したかの様に呟いた。
私 「ん?どうしたの?」
I君「いや、N君さ・・・Mさんの事どうするつもりなんだろ?」
・・・
・・・
・・・
・・・あ、そうだ・・・忘れてた。
N君とMさん。
バイトの間でも半ば「公認の仲」とまで言われていたにも関わらず、
ここ最近、2人が話している所を見た事が無かった。
そして唐突に「ブーデー」と付き合い始めたN君。
もしや、私達の知らない間にMさんとの関係は終わってしまったのだろうか?
ジャーーー・・・・
と丁度トイレから出てきたN君にMさんの事を尋ねて見た。
私 「ねぇ、N君。そういえばMさんとはどうなったの?」
N君「えっとね、余り好きじゃ無くなっちゃった♪」
といとも簡単に言いのけた。
I君「え?!・・・だってあんなに『Mさん好きだ~』って言ってたでしょ?」
N君「うん、でもね・・・」
とN君は以前Mさんと遊園地に行った時の事を話し始めた。
N君「あのね、遊園地の帰りなんだけどね、道端に1円玉が落ちてたのね。
んでね、僕は通り過ぎようと思ったらMさんがイキナリ、
『あ、1円玉、勿体無い。』って言って拾うんだよ~。
これで何か醒めちゃったんだー。」
んー・・・・なるほど。
まぁ、醒める原因ではあるな・・・・・。
Mさんは良い人なのだが、唯一「金にうるさい」と云う致命的な欠点があった。
彼女が財布からお金を取り出してる所を見た者は殆ど居らず、
仕事中に自動販売機で買ったジュースを飲む我々を余所に
「120円払うの勿体無いわ~」
何て云って、店の残ったジュースもしくは水を飲むような人だった。
まぁ、それだけなら未だ良いのだが、
ある日、皆で飲み会に行った時に
1時間ほど遅れて登場したMさんが会計時に言ったセリフ。
「3時間中2時間居たから・・・飲み代3分の2で良いよね。はい♪」
(『はい♪』って・・・。)
流石にビックリしました・・・。
ともあれ、そう云うMさんの性格にN君は遂に醒めてしまった訳だ。
私 「ふ~ん、そうかぁ・・・それなら仕方が無いよな・・・。」
I君「じゃあさ、ちゃんとMさんにはケジメつけたんだね?」
N君「いや、つけてないよ♪」
へ・・・?
と云う事は、Mさんは未だ何も知らないのか・・・・・。
N君は当時、一人暮しを始めたばかりなのだが、
部屋を一緒に探したのは他ならぬMさんだった。
いや、厳密に云えば「一緒に」では無い。
一人じゃ何も出来ないN君は、家を探し始める所から入居するまでの全てを、
Mさん一人で手配したのであった。
まさに愛の力である。
しかし、そんな思いで手配したN君の部屋には、
現在「ブーデー」が飼育されている状態だ。
当然、Mさんにはそれを知る由も無い。
私 「あのさー、N君。一応Mさんには
『付き合ってる人が居る』って言った方が良いんじゃないのか?」
N君「えっ!・・・う、うん・・・。」
I君「一人暮しの件とか、Mさんに色々と世話になってるんだろー?
それならちゃんとケジメはつけようゼ。」
N君「うーん・・・・でもさー・・・。」
とN君は暫く考えた挙句、
N君「じゃあ、今度一緒に仕事入った時に言うよ。それで良いでしょ?」
私 「・・・そうだね、その時にね。」
と云った流れで、
『Mさんと仕事をする日にブーデーと付き合っている事を打ち明ける』
との約束をN君と交わしたのだった。
そして約束の日はやってきた。
Mさんと一緒に働いていたN君は終始落ち着きが無かった。
洗い物の食器は割るわ、寸胴(大きい鍋)を沸騰させ過ぎて溢れ出させるわ。
(んー、解り易い男だなぁ・・・。)
と私は客からの注文も無くなってMさんの手が空いたタイミングを見計らい、
目でチラチラと合図しながら、N君を急かすのであった。
しかし、何時まで経ってもN君は何も言わない。
Mさん「ん?どうしたの~?」
N君 「あ・・・べ、別にぃ~。」
と云った会話が何度も繰り返されており、
明らかに打ち明けれるチャンスをスルーされているご様子だ。
(もしや・・・、怖気づいたのかぁ?)
私はだんだん腹を立てつつあった。
なんだかんだ云って、Mさんにはとても世話になった訳だ。
今、N君から打ち明ければ、多少ショックは受けるだろうが、
いずれ付き合ってる事がバレるよりも傷は浅くて済むと思っているのに
N君はそれを解っちゃぁ~いないんです。
私 「・・・さっきから見てるけどさぁ、何で言わないのさ?」
N君「だ・・・だって・・・、言う機会が無いんだもん・・・。」
私 「はぁ?!さっきから何回もあったでしょうが・・・。」
N君「え・・・そんな事無いよぉ・・・・。」
私 「・・・ま、いいや、N君がこのまま言わないのなら
俺の口から言っちゃうからね。」
N君「あっ・・・ちょっ・・・ちょっと待ってよ!!
・・・解ったよー。店閉めた後に絶対言うからさー。」
と結局、『仕事が終わってからMさんに話す』事になった。
引き伸ばすのは良い事ではないが、
「正直に打ち明ける」事はとても勇気がいる、と云うのは解っている。
ましてや、臆病なN君だ。
まぁ、もうちょっとだけ待ってあげようと私は考えた。
しかし、神様はそれを許さなかった。
それから暫くして、
・・・ピンポーン。
と自動ドアのアラームがなったので、
「いらっしゃいませー!」
とドアの方を振り向いた瞬間、私は愕然とした。
そこに居たのは、
1.5倍程度横長な豹柄の服に身を包まれ、
似合わないシャネルのバックを右手に持った金色の女・・・・
そう、「ブーデー」様のお出ましである。
「N君ー。食べに来たブフィー。」(←「ブフィー」は想像)
と言いながら「ブーデー」はズカズカとN君が居る厨房へ歩いていった。
その時、私は
(・・・ウプッ!!臭っ!!)
と悶絶。
どうやら、香水を付けている模様だ。
「ブーデー」の事だから、多分「シャネルの香水」であると思われるが、
「ブーデーCはあまいいきをはいた!」
という感じの臭いを発している様に思われるのが不思議だ。
それはともかく、「ブーデー」の姿を見つけたN君。
すると、満面の笑顔で
「おー、来たか♪まぁ、座ってよ♪」
と言ったかと思うと、あっという間に仕事を放り出し、
ブーデーの元へ向かい、イチャイチャし始めたのであった。
どうやらN君は以前に「今度、食べに来なよ~」とブーデーに店の場所を教えていたらしく、
よりによって、この「ブーデー」はMさんとケジメをつける日に来てしまったのだった。
(・・・タイミング悪過ぎだよ・・・・。)
こうなれば、もはや手遅れだ。
MさんはN君とブーデーがイチャイチャしているのを見て、
暫くキョトンとしていたが、やがて全てを理解したようであった。
そして更に「ブーデー」のエサ(※ タダ飯)も作らされる屈辱も味わい、
余りのショックと怒りからだろうか、
MさんとN君は、閉店まで終始無言のまま、時が過ぎていったのであった。
そして閉店後、
私はそそくさと「お、お先に失礼しまーっす!!」と、店を後にした。
よってその後、N君がどうやってMさんにフォローしたのかは解らない。
ただ次の日にバイトの女の子が
「Mさん、さっきトイレで泣いてたみたいですよ。」
と私に話し掛けて来たり、
Mさんと仲の良かったWさんが
今まで見た事が無い位の物凄い形相で店にやってきて、
「あんた、Mさんに何やったのよ!!」
とN君の胸倉を掴んだりしたと云う点から
どう云った対処を取ったのか、大体想像は出来た。
ともあれ、その日を境にバイトの女の子達は
N君の事を「女の敵」と隠れて呼ぶ様になり、
バイト先でのN君の名は益々地に落ちるのであった。
でも、N君はへっちゃら。
だって、ブーデーが居るんだもん。
ちなみに、その後のMさんはと云うと・・・
今までコツコツと貯めていた貯金の大部分をおろしたかと思ったら、
それらを全て結婚相談所の入会金等の費用に注ぎ込み、
3ヶ月も経たない内に結婚、そして電撃退職していった。
そんな目まぐるしく環境が変わったMさんを余所に
N君は相変わらずしか入れさせて貰えなかったそうだ。
がんばれ、N君。
続
|