ある日、N君が愛読書「東京ウォーカー」を読みながら呟いていた。
「スノボ・・・面白そうだなぁ、やってみようかなぁー♪」
丁度、その頃はスノーボードブームが始まったばかりで、
色々な雑誌に「スノボ特集」とか組まれていた時期だった。
そう、N君は早速ブームに乗ろうとしたのである。
しかし、いつもやる事成す事中途半端なN君。
(どうせ、すぐ飽きるんだろうな)
と考えた私はいつもの様に説得を開始した。
私 「止めた方がいいんじゃないの~?」
N君「え~、そうかなぁ~。面白そうじゃん。」
私 「それは解るけどさぁ、その前にお金あるの?
ウェアやらボード揃えるだけでも結構かかるよ。」
N君「あっ・・そうかぁ、どんくらいかかるのかなぁ。」
私 「それは知らんけど・・
だったらさ、シーズン始まったばかりだからさ、
もうちょっと待ってみれば?ウェア安くなるかもしれんし。」
N君「ん~、そうだよねぇ、もうちょっと待って見ようかなぁ~。」
・・・それで良し。
これでしばらく経てばN君のスノボ熱も冷めるだろう・・・・
と、思ったのが間違いだった。
2日後、バイトの為にうどん屋に行き、店の裏へ入ろうとしたら・・・・・。
ドアの横に立掛けてあるビニールに入ったスノーボード。
(ああ、人の話聞いてなかったか・・・・・。)
店の中に入ると休憩中だったN君が嬉しそうに
「えへへ~買っちゃったよ~!」
ととても嬉しそうな顔をして、私に言ってきた。
そして、その手には真新しい紙袋を持っている。
中にはスノーボード用ウェア(上下)、ゴーグル、帽子等のアイテムがギッチリと詰まっていた。
私がうどん屋に来る1時間ほど前、近くのスポーツ用品店で購入したらしい。
金額はいくら位かかったのか聞かなかったが、
クレジットで分割払いにした位なので相当な金額には違いないと思われる。
とまぁ、N君のスノボに対する情熱は良くも悪くも私に伝わった訳で、
待望のスノボデビューまで後もう少し、と云う所まで行き着いた。
しかし、その先に行くには一つの大きな壁があった。
それは車であった。
関東平野ギリギリに位置するココ、厚木(神奈川県)には当然スキー場がない。
実際に滑りに行くとなると一番近いスキー場でも50kmはかかる。
よって、滑りに行く為にはどうしても車は必需品となってくるのだが、
N君は車以前に自動車免許を持っていない。
過去に数回、自動車免許取得の為に教習所に通った経験があるが、
相変わらずの中途半端ぶりをそこでも十二分に発揮し、途中で断念する事に相成ったのだ。
尚、N君のプライベートの友達は一人も車を持ってない。
原チャリは持っているが、流石にボードを背中に担いでスキー場に行くのは不可能だ。
「うぅぅ・・、どうしよう・・・・。」
N君が困り果ててしまった。
しかしその時、彼に救いの手を差し出す者がいたのだ。
K君(仮名)と云う人物がそうだ。
K君は私達と同い年で、うどん店の裏にある某パスタ屋でバイトをしていた。
休憩ついでに夕飯を食べようと思い店に入ろうとした所、
N君の新品のスノーボードが目に付いた(付いてしまった?)らしい。
K君「あれ~?N君ってスノボすんの?」
私 「いや、これから始めようかと思ってるんだってさ。」
K君「ふ~ん、で、いつ行くの?」
N君「えへへ、実は未だ決めてないんだ♪」
K君「そっか~・・・あ、そうだ!」
話を聞くと、K君は来週に某パスタ屋の人らと一緒にスノボしに行く予定だった。
当然、彼は車(確かRVR)を持っており、スキー場も彼の車で行くとの事。
「もし良かったら一緒に行かないか?」
と言うK君の誘いを断るはずも無く、N君は初スノボの舞台となる
『富士見パノラマスキー場』
へ出掛ける事になったのだ。
続
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