「抜け忍事件」があってからと云うもの、N君の消息は不明。
街を歩いても、全くその影を見かける事は出来ず、
(もう、N君に会う事は無いんだろうなぁ・・・・)
と感じていた。
しかし、それから数年後の2000年8月に偶然にもN君と再会する事になる。
とある休みの日に、私のかみさん(仮)とデパートに買い物に行った時であった。
最上階のレストランフロアで食事をした後、エスカレーターを降りている最中に
「あれ~?○○(←私)じゃない?久しぶり~♪」
と云う、暫く聞いてなかった不快な周波数が耳に割り込んで来た。
ふと前方を見ると、私と同じエスカレータに乗り、
私の方を見ながら、ヘラヘラと笑ってるヤツがいた。
そう、N君である。
約4年ぶりであった。
N君の雰囲気は以前と比べてすっかり変っており、
茶髪のロン毛、肌の色は普通、TシャツにGパンと云ういでたち。
私の知っている昔の「偽・ヘビメタスタイル」とはうって変った格好であった。
しかし、N君の身長は相変わらず低い・・・
と云うか、「少し縮んだんじゃない?」と思えるほどだ。
いや、もしかしたら
『ボクは小者ッス、押忍』
と云わんばかりの「N君オーラ」を醸し出していたからかもしれない。
私 「お、おー、N君久しぶりー。」
N君「うん、久しぶりだねー、いやー何年ぶりだろ?」
と相変わらずの笑顔、そしてつぶらな瞳で話し掛けてくれた。
この頃、私は既に自分のサイトで
「Mr.Narbee~N君がいっぱい~」
を掲載している真っ最中だったので、
N君のその屈託の無い笑顔を見て、私は罪悪感を感じずにはいられなかった。
・・・んな訳ないよーな、あるよーな。
ともあれ、そのままN君と共にエスカレーターを降りながら、
私はN君の現在の仕事について聞いてみた。
私 「ねーねー、N君は今何やってんのー?」
N君「今さ~、○○自動車の部品工場で働いてるんだ♪」
私 「へぇ、そうなんだー、『厚木』市内では無いんだねー。」
N君「うん、そうだよ♪」
N君「でね、愛知が洪水でダメージ受けちゃってさ~、今日は代休なんだ♪」
N君「洪水で部品が届かないんだよねぇ~。」
N君「休みたくないのに会社の都合でおやすみだよぉ~♪」
N君「だから今日は久しぶりに買い物に来たんだ♪」
聞いてもいない事までN君は話してくれた。
言葉の節々から察するに、あの衝撃的な
『N君抜け忍事件』
については、あっと云う間に忘れてしまったようだ。
もしかしたら、時間の流れが忘れさせてくれたのかもしれない。
・・・んな訳ないよーな、あるよーな。
それよりもN君と話している間、一つ気になっていた事があった。
N君の隣でじーっと私を見つめている人物・・・・・誰だ?
良く見ると女性のようにも思える。
スカートを履いていたからだ。
(もしや・・・隣に居る生物は『N君の彼女』では無かろうか・・・?)
と気が気でならなかった。
そんな疑問を残しつつ、1階に到着。
「それじゃあ、又ねぇ~♪」
とN君は言いながら、辺りを見渡した。
すると、先程まで隣に居た筈の地球外生物(彼女?)の姿が見えない。
「あれ?どこ行ったんだ、あいつ?」
とN君はキョロキョロと見渡している。
気が付けば、私も忽然と消えた地球外生物を探していた。
一体、ヤツは何処に消えてしまったのだろうか?!
「あのー・・・・外行っちゃいましたよ。」
とそこへ突然、口を開いたのは私のかみさん(仮)であった。
私達がそのままデパートの外に出てみると、
そこには既に向かいの横断歩道を渡り、
スタスタと先に行ってしまった地球外生物の姿があったのだ。
するとN君、
「ありゃりゃー・・・行っちゃったよ。それじゃあね!」
と言い残し、地球外生物の後を追いかけていった。
「あ、N君!・・・・あーあ、行っちゃった・・・。」
結局、隣にいた地球外生物の正体も聞かず終いだった。
そこでネタに飢えていた私はかみさん(仮)に
「あのさぁ、ちょっとN君の後を尾行してもいいかな?」
とN君の後を走って追いかけていったのだった。
私とかみさん(仮)がちょっと追いかけると、直ぐにN君の姿を確認する事が出来た。
丁度、N君も地球外生物に追いついた所だった。
そして、そのまま後を尾行してみる。
「んー、N君どんな事話してるんだろうなぁ・・・」
ふと、私の脳裏に昔のN君の彼女達が走馬灯の様に駆け抜けては消えていった。
何れも一癖二癖あるツワモノ達だ。
N君は、しきりに地球外生物とコンタクトを取っているようだ。
しかし、地球外生物はN君には見向きもせずにスタスタと歩いて行く。
どうも尻に引かれているようだ。あの地球外生物にだ。
「嗚呼、N君・・・君は又同じ事を繰り返すつもりなのかい?」
私は後を尾行しながら、同じ轍を歩もうとしているN君を哀れんでいた。
その内にN君と地球外生物は、とあるゲームショップへと入っていった。
「よし、ココから先は危険だ。僕が一人で行く。」
とかみさん(仮)を向かいの雑貨屋の中に退避させ、
私は単身、N君が入っていったゲームショップへ足を踏み入れた。
中に入ると、物凄い蒸し暑さに襲われた。
特に今日は日曜日なので人が沢山居る。
更にその中で汁まみれのヲタのおにーさんも混じっているので、
暑さと謎の匂いとミックスされ、美しいハーモニーを醸し出していた。
「うぅぅ、気持ち悪り~。」
と頭が朦朧としていると、
「・・・・あっ、N君だ。」
人ごみの中に私が居る方へ向かってくるN君と地球外生物がいる。
「・・・おっと・・・あぶない。」
私はプレステコーナーの棚に隠れた。
するとN君と地球外生物は棚の向こう側の通路に入り、一緒にゲームソフトを選び始めた。
棚にある「桃太郎電鉄」が無ければ、丁度、私と目が合ってしまう位の至近距離でだ。
私はそのまま棚の隙間越しからN君と地球外生物を見つめていた。
始めはN君はかなり弱い立場にいるのかと心配したが、
見る限り、そういった様子は見当たらなかった。
むしろ、地球外生物の方からN君に寄り添っている。
「ふ~ん、N君も満更じゃあ無いんだなー。」
昔の「お子ちゃま」な頃とは違う、大人の雰囲気を出していたN君。
4年という歳月が彼を変えたと云う所だろうか。
その後、私はN君達に気付かれない様、ゲームショップを後にした。
最近のN君が何となく解った事と、
『飽きた』と云うのが主な理由だ。
「N君・・・立派になったなぁ・・・・」
と私は夏真っ盛りの雲一つ無い青空を見上げながら、そう呟いていた・・・。
と、これでN君と久々に会った話は終わりだったのだが、
実はその2ヵ月後、この話をまとめている最中に2児の母になったばかりのWさんから
Wさん「今度の飲み会でN君来るよー」
私 「ま、マジっすかぁぁーーー!!」
と云う電話が来た事で、再びN君と会う事になった。
そこで、何とかしてN君ネタをGETしてやろうと思った私は
飲みの席でN君にそれとなく地球外生物の事を聞いて見た。
私 「ねぇねぇ、あの時一緒に居た女の子誰なんだよー??」
N君「あー、あれ・・・ゴメンねー!挨拶させなくてー。
挨拶もしないオンナなんてヤダよねー?」
私 「あれ?付き合ってるんじゃ無いの?」
N君「違うよー!人に挨拶もしないオンナなんてこっちからお断りだよー♪」
私 「あっそぅ・・んじゃ彼女じゃ無いんだぁ。」
N君「うん、割り切った友達。」
・・・何を『割り切った』の?
と意味不明な発言に呆然としている私に、今度はN君の方から話を振ってきた。
N君「ねぇねぇ、そういえばまだビリヤード続けてるんだって?」
私 「うん、相変わらずやってるけど・・・」
と答えてしまったのが間違いだった。
N君「あのねあのね、僕もね、又ビリヤードやり始めたんだ♪」
N君「でもね、ちっとも上手くならないんだよー♪」
N君「今度さ、一緒にやろうよ♪」
と、そこで終わるなら普通の会話だ。
しかし、N君との会話はこれからが本番だ。
N君「ねぇねぇ、週末はいつも暇だからいつでも電話頂戴♪」
N君「電話したら1時間前でも絶対行くから♪」
N君「あ、そうだ!携帯持ってるよね?」
N君「じゃあ、電話して見て♪えっと、090の・・・」
ぎゃああああああぁぁぁぁぁ!!
勝手に話が進められているぅぅぅぅぅぅぅ!!
こうして私の携帯番号はめでたくN君の携帯に登録される事になり
週末、電話が鳴る度に
(ハッ・・・!!N君からじゃあないか?!)
とビクビクする日々を過ごすのであった。
完
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