私とN君が出会ってから既に数年が経った。
出会った頃から色んな意味で何も変わらないN君は、
相変わらず腕に傷つけたり、人に迷惑をかけたり、そして甘えて来たりしている。
それも本気でだ。
N君はいつでも全力投球だ。
N君のそんな素敵な性格になってしまったのは理由がある。
その一つに当時24~5歳位と思われる女性社員による教育が挙げられる。
中学を卒業して、すぐうどん屋で働き始めたN君、
本来であれば、社員としての自覚を持たせなければいけない大事な時期に
「N君~♪ご飯食べる~?」
「N君~♪少し仕事休んでても良いよ~♪」
と、見るからに
(オイオ~イ、幾らなんでも過保護何じゃないのぉ?)
と言ってやりたい位の可愛がりぶりを見せていたらしいのだ。
そんな教育で育ったN君、
女性社員が辞めてからも甘えられたと云う感覚が残っていたせいで、
20歳を過ぎても社会人とは程遠い甘ったれた考えを持っていたのであった。
仕方が無いと云えば仕方が無いのだが・・・。
ともあれ、そんなN君の性格に同じバイト先の女の子からは
「N君って、マザコンぽいよね~。」
「うん、それに頼りないしね~。 」
と、陰で散々叩かれていたのであった。
しかし、そんなN君でも全くモテなかった訳ではない。
むしろ、モテていた方の部類に入るのだ。
今まで付き合った女の子の人数もかなり多い。
それも殆どN君より年上の女の子だ。
N君のお子ちゃまチックな行動に母性本能をくすぐられてしまうのだろうか。
逆に、N君の好みはどういう子なのだろうか?
・・・ハッキリ云って、良く判らない。
今まで付き合った女の子を振り返って見ても
「へ~、こういう子が好きなんだぁ」
と言えるような共通点が、全く持って見当たらないのだ。
いや、一つだけ共通点がある。
それは、私が今まで見た中では全員、と言って良いほど
「ブサイク」
だ。
顔だけならまだ良い。
性格すらも「ブサイク」なのである。
絶対に日本男性の9割以上は同意する、と断言できるほどだ。
それも色んなジャンルを経験している。
痩せた女性から太った女性まで何でもOK。
N君はいつでも全力投球だ。
例えば、前回登場した現役女子中学生も「ブサイク」の中の一人である。
初めてN君に紹介された時、イメージが浮かんで来たのは、
『髪型はウルトラの母、顔は巨人の桑田真澄』
又、私がバイト中に、休暇中のN君と一緒にお店に来たのだが、
私の奢りで
「ジュース飲む?」
と気を使ってみた所、普通ならお礼の一言くらいは言うべき所を
「きゃははは、ラッキー!!」
との一言で終わらせる、ブサイクぶりであった。
早速、N君と女子中学生が帰った後にI君にグチ開始。
私 「何だよ、あのバカ女。お礼くらい言えよなー。」
I君「まぁまぁ、いいじゃんか。まだガキなんだし。」
私 「くそ・・・”今度”会ったら覚えてろよ・・・。」
しかし、その「今度」 は二度と来なかった。
それから1ヶ月も経たない内に、バタフライナイフでお馴染みの
「こんなに好きなんだー!、でプスッ。」
即ち、「こん・プス」事件が起こってしまったのだ。
以降、N君の恋愛が終わる度に、私とI君でN君が付き合ってた彼女に敬意を表し、
あだ名を命名し殿堂入りさせる事が、恒例の行事になっていった。
ちなみにその女子中学生については、
「桑田」
もしくは
「ネコ娘」
と呼ばれる事になる。
それからも、私とI君はN君の恋愛風景を見てきたが、
『一難去って、また一難。』
と云う法則に基づき、N君に告白する「ブサイク」は後を絶たなかった。
私は様々な人からその話を聞く度に
(何故、こんなにモテるんだろう?)
と云う軽い嫉妬と共に、
(N君って・・・何故、”来る者は拒まず”なの?!)
と云う疑問を膨らませていった。
やがて、その答えは判明した。
ある日、N君が仕事中に上の空だったので、
「どうしたの?ぽけ~・・・として。」
と私が聞いて見た。
N君「あのさ・・・『ときめきメモリアル』って知ってる?」
私 「あぁ、知ってるけど・・・、それがどうしたの?」
N君「うん・・・それにね、詩織ちゃんっているでしょ?」
私 「うん、いるね。」
N君「ああ云う娘がさ・・・
近くに居ると・・・良いよね・・・。」
ああ、なるほど。
N君は「ときめき」が欲しかったんだ。
そして現在・・・・。
あの「ゲテモノ食い」で「詩織好き」なN君は、
フィリピンと日本のクォーターの妹(腹違い)と一緒に
二人暮らしをしている・・・・らしい。
・・・すっげぇ。
完
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