ナイフ使いのN君

十字架のネックレスの話をして、大体想像がついたと思われるが、

N君はとても変わり者だ。
未確認だが、恐らくMに近い属性を持っていると思われる。



さて、飾り物がとっても大好きなN君。
実はもう一つ、好きなアイテムがあった。

それは


「バタフライナイフ」


である。

仕事中でも、作業着のポケットにはいつもバタフライナイフ。
暇さえあればバタフライナイフをクルクル回しては遊んでいた。
手が滑って「自分の手を刺しちゃった~エヘヘ」って云うのも多々あった。

ある日、

「N君って、何でそんなにバタフライナイフ好きなのー?」

と、私が聞いてみると、

「えへへ~、だってさー、格好いいじゃん。」

「十字架のネックレス」と同じ理由、そして相変わらずのつぶらな瞳で答えていた。


その当時、巷ではバタフライナイフを使った物騒な事件が多かった。
よって、もしかしてN君も?と心配していたが、
良く考えれば、N君にとっての「バタフライナイフ」は
使用目的なんて無い、単なるステータスの一部でしか無かったので、
先ず、心配無いだろうなと考えた。





しかし、それは大きな間違いだった。


その後、N君の持つバタフライナイフ
我々の記憶の残るとんでもない障害事件へと発展する事となる。





丁度、その頃N君には彼女がいた。

驚くべき事に、その彼女の年齢は当時14才。


I君が聞き出した情報では、家の近所に済んでいた現役女子中学生だそうで、
N君がたまたま遊びに行った際に様々な過程を経て、遂に交際を開始したらしいのだった。



恋愛はある程度は自由、付き合う事自体は問題は無い。

ただその事実を聞いた時に私とI君は、大学生相当の年齢であられるN君が
何も知らない女子中学生手篭めにしたのは如何な物かと云う疑問を持っていた。

だが「僕ねー僕ねー」といつも言ってるN君は
恐らく、同世代の女の子には余りにも頼りなくて恋愛対象にはならない

そして、実際にN君とその中学生を見ると、
(予想通り)N君が女子中学生の尻に引かれながらも仲良くやってるようなので、
なんだかんだ言いながらも、私とI君はN君を祝福していたのであった。



しかし、楽しい事は長くは続かなかった。
やがて、二人は別れる事になる。

原因はその女子中学生に男が出来たらしいという事だった。


N君はその事を薄々感づいていたらしく、ある日私はN君に呼び出された。

N君「なんかさー、○○(←彼女、呼び捨て)が
   他に彼氏が出来たらしいんだよー。」

私 「えー!ほんとう?・・・ヒドイなぁ。」
N君「で、さっき『話がある』って電話が来たんだけど、
   多分その事だと思うんだー。」

私 「ふんふん」

N君「お願い、一緒に来てくれないかな?」


え?


私 「おいおい・・・、俺が行っても意味無いじゃん。」
N君「だってさー、一人だと不安でさー、ね、頼むよー」
私 「・・・行っても良いけど、何も出来ねーよ?」


と言う訳で、私はN君の付き添いとしてN君の家に行くこととなった。
その際、たまたまバイト先に遊びに来たI君も無理やり巻き込んでみた。




N君の家に着き、マンガを読んでいると暫くして

ピンポーン

と呼び鈴が鳴った。

現役女子中学生の登場だ。


取りあえず、私とI君は「どうもどうもー」と中に入ろうとする女子中学生と
入れ替わるように家を出て、外から聞き耳を立てる事にした。



案の定、別れ話は女の子の方が切り出したらしい。
抑揚の無い女の子の声に対し、「そんなー」とか「やだー」という悲痛な声。

「んんん・・・未練タラタラですなぁ・・・」

とワクワクしながら話を聞いている内に、やがて悲痛な声は聞こえなくなってきた。
どうやら、N君も観念したようだ。


その後、I君と私は近くのコンビニで時間を潰し、
20分程経った頃に、「もう、そろそろ良いんじゃない?」と再度N君の家に戻ってきた。




すると、女子中学生が「それじゃ・・・」とちょうど帰る準備をしていた。
一方のN君は部屋の端で悲しそうな顔をしながらうつむいている。



(ああ、N君はよっぽと彼女の事が好きだったんだねぇ・・・)

と思った私はN君を慰めようと出て行こうとする女子中学生と
入れ替わるように家の中に入ろうとした。





その時、N君に異変が起きた。







「うおおおおおおおおおおお!!!!!!」


と突然、絶叫し始めたのだ。

私とI君、そして女子中学生がN君の余りの大声に呆然としていると、
N君は自分の部屋に駆け込み、あるモノを持ってきた。



そう、N君の右手には例のバタフライナイフが握られていたのだった。




(これはかなりヤバイ!)


と、思った私とI君は止めに入ろうとN君の方に駆け寄った。




だが、次の瞬間、



N君は我々が目を疑う程のとんでもない事をやり始めたのである。







N君はそのバタフライナイフ


自分の左腕を刺し始めたのだ。



何回も何回も・・・・。

「こんなに好きなんだよー!こんなに好きなんだよー!」

と叫びながら・・・・・・・。





その後、N君の傷は大した事無く家の包帯だけで応急処置が出来た。

だが、N君の心の傷までは応急処置をする事が出来なかった。

今回の恋愛が「N君はM属性」だったという現実を
女子中学生に知らしめただけで終わらせてしまったからだ。


N君は応急処置を済ませてからも、

「うううう・・・悔しいよー・・・・・・痛いよー。

と、涙を流しながら何回も呟いていた。


そして、そのショックは次の日も持ち越されて、殆ど仕事にならない状態だった。






それから1日後、即ち、事件から2日経ったバイト先での事。



私 「N君ー、彼女の事だけどさ・・・余り気に

N君「ああ、あの娘? もうどうでもいいや。」



N君は既に吹っ切っていた。


(吹っ切れるの早っ!!)

と私は思うと共に、そんなN君に振り回される左腕も可哀そうだと思った。











キャスト
  • Mr.Narbee(N君)
  • I君(セリフは無し)
  • 昭和Verのネコ娘に酷似した現役女子中学生の彼女
  • 切れ味は皆無に等しいバタフライナイフたん
  • 前回の火傷の時にお世話になった医者






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